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2020年9月17日

非上場企業が優先株式発行で資金調達するメリットとデメリット

現在の日本で非上場企業が株式による資金調達を実行しようとした場合、上場企業に比べて投資家集めが難しいのが実情です。しかし、優先株式発行という手法を活用することで、非上場企業でも資金調達を行いやすくなります。今回は、非上場企業における優先株式発行による資金調達について、そのメリット、デメリットを解説します。

1 優先株式とは何か

1-1 優先株式とは

まず、「優先株式」とは何かという点から説明していきます。

優先株式ではない一般的な普通株式の場合、株主には配当などを受ける権利と、株主総会の議決権の二種類の権利が認められます。これが一般的に「株式」といった場合にイメージされるものです。

しかし会社法では、こうした普通株式以外にも、「種類株式」と呼ばれる普通株式とは異なった内容の株式を発行できると定められています。

その種類株式の中で、普通株式よりも投資家にとって有利になるような内容が含まれているものが、「優先株式」と呼ばれる株式です。

1-2 優先株式に認められる特別な権利とは

では、優先株式はどのような点で普通株式と異なる権利を付与しているのでしょうか。優先株式には、例えば下記のような権利が認められています。

  • ●優先株式は普通株式と比較して配当金を優先的に受け取ることができる
  • ●もし株式を発行している会社が倒産した場合には、優先的に財産を受け取ることができる

一方で、優先株式は普通株式で認められる株主総会での議決権が限定されていたり、その他の株式に転換することも認められていないなど、いくつかの制限も存在しています。

1-3 優先株式の「型」と「様式」

優先株式の分配については、大きくわけて3つの型と2つの様式が存在しています。

まず分配に関する3つの型から見ていきます。

1つ目は完全参加型の優先株式です。このタイプは、配当金が支払われる際に、事前に決められた優先される分配を受けた後、さらに普通株式と同等の分配も受け取ることができます。

2つ目は非参加型の優先株式です。このタイプは、事前に決められた優先される分配のみを受けることができます。前述の完全参加型優先株式と異なり、普通株式と同等の分配を受けることはできません。

3つ目は制限参加型の優先株式です。このタイプは、事前に決められた優先される分配を受けた後、一定の制限まで普通株式と同じ分配を受けることが可能です。

次に分配に関する2つの様式について見ていきます。

1つ目の様式は累積型の優先株式です。この様式は、配当金があらかじめ優先株式に定められている優先株配当金の金額に到達しない場合、その不足分について次年度以降に繰り越すことが認められます。

2つ目の様式は非累積型の優先株式です。こちらは、あらかじめ優先株式に定められた優先株式配当の金額に不足した分を次年度以降に持ち越すことができません。

優先株式には、このような配当に関係するいくつかの分類が存在しているのです。

1-4 優先株式による資金調達の実例

優先株式が日本社会で広く知られることになったきっかけは、1990年代後半に大手銀行に対して行われた大規模な公的資金注入のタイミングでした。

当時、大手銀行側が優先株式を発行し、国がそれを買い取るという形で救済策が実行され、優先株式はメディアなどを通じて大きな注目を集めました。

しかし、そうした緊急的な事例以外でも、優先株式を活用した資金調達は数多く行われています。

例えば「お~いお茶」で有名な伊藤園は、資金調達の選択肢を増やすことを目的とし、2007年に優先株式の発行を行いました。

伊藤園の場合、優先株式の株主に認められる配当は、優先株式配当に加えて普通配当の125%を設定しました。株主総会の議決権は認められていませんが、安定的に配当を受け取ることを目的とする投資家にとっては魅力的な選択肢となりました。

2 非上場企業が優先株式の発行により資金調達を行うメリット

では、非上場企業が優先株式の発行による資金調達を行う場合、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

メリット①―― 非上場企業も効率よく資金調達が行える

ここまで見てきたように、優先株式は普通株式に比べ配当金が多く設定されていたり、株式の発行会社が倒産した際のリスクが限定されているなど、投資家にとっていくつかの利点があります。

そのため、優先株式は通常の株式よりも価格が高くなる傾向があります。つまり、通常株式と優先株式を比較した場合、優先株式を発行したほうが効率よく資金調達を行える可能性があるのです。

メリット②―― 議決権を制限し経営の自由度を維持できる

普通株式の場合、株主には株主総会の議決権が認められ、経営に参加することが可能になります。

一方で優先株式の場合は、株主に株主総会の議決権を付与しないことが可能です。つまり、優先株式発行による資金調達ならば、経営の自由度を維持したまま資金調達を行うことが可能になります。

そのため、株主の意向はあまり気にせず、限られた役員中心で会社経営を実行したい場合などに有効な資金調達手法になります。

メリット③―― 自己資本比率を調整できる

優先株式の発行という手法で調達した出資金は、会社の資本金という扱いになります。そのため、自己資本比率が低下しているタイミングで優先株式の発行を行えば、自己資本比率を向上させることが可能になります。

3 優先株式発行による資金調達のデメリット

優先株式発行による資金調達にはメリットが多く存在しています。しかし日本市場では、まだまだ限られた手法となっているのが実情です。

日本市場で優先株式発行による資金調達が浸透しない背景には、まだまだ積極的に優先株式に出資する投資家の存在が限られていることがあげられます。

そのため、優先株式による資金調達には、買い手となる投資家探しが難しいというデメリットがあります。

なぜ日本市場で優先株式に投資する投資家の存在が限られているかというと、ここまで見てきたような優先株式の特徴が影響しています。

例えば、優先株式は一般株式よりも配当が優先されることなどから、配当金や余剰金の分配で着実に利益を確保したいと考える投資家に好まれる株式といえますが、一方で優先株式そのものの価格変動は芳しくなく、株式の売買で利益を確保しようとする投資家にはうま味の少ない株式ということになります。

加えて議決権の制限などの要因も相まって、その買い手は限られてしまうのです。

4 まとめ

投資家探しをうまく実行することができれば、優先株式を活用することで資金調達の機会を拡大できるのは間違いありません。実際に、アメリカやヨーロッパの市場では優先株式を中心に投資をする投資家も数多く存在しています。

優先株式発行による資金調達にご興味のある方は、買い手となる新規株主とのマッチングや、実際の資金調達の実行支援まで、専門家に相談しながら最適な手法を検討することをおすすめします。

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記事協力

幸田博人

1982年一橋大学経済学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)入行、みずほ証券総合企画部長等を経て、2009年より執行役員、常務執行役員企画グループ長、国内営業部門長を経て、2016年より代表取締役副社長、2018年6月みずほ証券退任。現在は、株式会社イノベーション・インテリジェンス研究所代表取締役社長、リーディング・スキル・テスト株式会社代表取締役社長、一橋大学大学院経営管理研究科客員教授、京都大学経営管理大学院特別教授、SBI大学院大学経営管理研究科教授、株式会社産業革新投資機構社外取締役等を務めている。

主な著書

『プライベート・エクイティ投資の実践』中央経済社(幸田博人 編著)
『日本企業変革のためのコーポレートファイナンス講義』金融財政事情研究会(幸田博人 編著)
『オーナー経営はなぜ強いのか?』中央経済社(藤田勉/幸田博人 著)
『日本経済再生 25年の計』日本経済新聞出版社(池尾和人/幸田博人 編著)

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