非上場企業の少数株式の流動化支援、株主構成・資本政策の課題解決

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非上場企業の少数株式の流動化支援、株主構成・資本政策の課題解決

2020年9月24日

非上場・同族企業で頻発する株主代表訴訟をどう防ぐか

新聞やテレビ報道などでもよく耳にする「株主代表訴訟」。ニュースになるのは上場企業や有名企業ばかりなので、中小企業のオーナー経営者には関係ないと思われがちですが、実は株主代表訴訟の大多数は、非上場の中小企業で起きています。今回は、株主代表訴訟を起こされないためのポイント、分散した株式の集約方法などについて紹介します。

1 株主代表訴訟とは

1-1 会社に代わって株主が責任追及できる

会社法847条には「株主による責任追及等の訴え」を会社に対して起こす権利が認められており、これが一般的に「株主代表訴訟」と呼ばれるものです。

たとえば、役員などが業務を適正に行わなかったり、会社に対する義務を果たさなかったりした場合、通常であればその役員と委任契約を結んでいる会社が責任を追及することになります。

取締役の監視役を果たすのは取締役会になりますが、そのメンバーが経営者の親族や同僚といった緊密な関係者で構成されるような会社では、相互の監視や責任追及が適切に行われにくくなります。中には取締役同士で違法行為に手を染める、といったケースもあります。

このように、取締役会が適切に機能していない場合、株主が会社に代わって訴えを起こすことが認められているのです。

1-2 株主代表訴訟を起こせる株主の範囲

会社法847条1項と2項には、株主代表訴訟を起こせる株主の範囲について、以下のように定められています。

<要約>

原告となり得る株主は、公開会社においては、6か月前から引き続き(訴訟終結時まで。一般的には口頭弁論終結時までと解されている。)株式を有する株主である。6か月前からという期間は、各会社の定款によって、6か月より短い期間を定めてもよい。

また、公開会社でない会社では、6か月という要件はなく、単に株主であればよい。
 
なお、株主代表訴訟を起こすには、以前は多額の訴訟手数料がかかりましたが、現在は、裁判所に1万3千円の収入印紙を収めれば可能となっています。

1-3 なぜ非上場の同族企業で株主代表訴訟が起きやすいのか

株主代表訴訟と言えば、大手上場企業で頻繁に起きているイメージがありますが、実際は中小の非上場企業、特に同族企業で起きるケースが圧倒的に多くなっています。

理由の1つは前述のように訴訟費用が安いこと。さらに、上場企業と違ってコーポレート・ガバナンスがしっかりと機能していないために、役員の不正が横行しやすいという事情があります。

分かりやすい例でいえば、経営者や役員が公私混同して、会社の経費を高級車や私的別荘の購入などプライベートな目的に使う、独断で私的な取引を行うといったケースはよく耳にするところでしょう。

会社役員は、会社に対して「善管注意義務・忠実義務」を果たす必要があります。善管注意義務違反に当たるのは、たとえば取締役自身が法律違反をする、他の取締役や従業員の法律違反を見逃す、経営判断の失敗で会社に損害を与えるといった行為です。

同族経営の非上場企業においては、これらの行為が適切に監視されず、見逃されやすい傾向にあるのは否めません。

1-4 身内のもめごと、嫌がらせで株主代表訴訟を起こされるケースも

これらの行為に対して会社が適切に対応せず、株主の損害につながった場合、株主代表訴訟を起こすのは全ての株主に与えられた権利です。

ただ、ここで問題となるのは、株式を保有する経営者の身内などが会社に対する嫌がらせ目的などで、重箱の隅をつつくような事例を基に、株主代表訴訟を起こすケースが非常に多いことです。

株主総会では意見が通らない少数株主が、自身の直接的な利益につながらなくとも会社への不満を公的な場で訴えるために行う、あるいは親子喧嘩や夫婦喧嘩の延長で身内の経営者や役員の責任を追及するというケースも頻繁にみられます。

特に経営陣に敵対する株主が親族や社員などの身内である場合は、内部情報が漏れやすく、訴訟となった場合は経営側が負けやすいのが実状です。

2 株主代表訴訟を防ぐためにすべきこと

2-1 株式を安易に分散させない

思わぬ形で株主代表訴訟を起こされないためには、経営陣が公私混同を行わず、法令順守をしっかりとすることが基本です。

さらに言うなら、将来的に敵対する可能性が高そうな第三者に安易に株式を保有させない、という点も非常に重要になります。

2-2 分散した株式を集約する方法

既に株式が多くの少数株主に分散してしまっている場合、株主代表訴訟を起こされるリスクも高まります。そうなる前に、経営者としてはできるだけ株式を集約しておきたいところです。

基本的な対策として、まずは株主と相対で買取交渉を行います。株主が協力的な場合は価格は当事者間の合意によって決定します。

一方、株主が買取に非協力的な場合は、少数株主から強制的に株式を買い取るスクイーズアウトを検討すると良いでしょう。株式を取得する側が90%以上の議決権を持つ場合は特別支配株主による株式等売買請求という手法で強制的な買取が可能です。保有比率が2/3以上である場合は、株主総会の特別決議によって、株式併合や株式交換の手法を用いて買い取ることもできます。

【関連】 非上場株式が分散することのリスクと集約方法

また、相続によって株式を取得した株主に対しては、売渡請求に関する規定を定款に定めておくことにより、株式の分散を未然に防ぐことができます。

【関連】 非上場株式の分散を防止する方法:相続人等に対する売渡請求について

どの手法が適切かは、会社や経営者の置かれた状況、株主構成など、さまざまな要因によって変わります。株式の集約について検討する場合は、豊富な知識と経験を持つ専門家のアドバイスの下で行ってください。

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記事協力

幸田博人

1982年一橋大学経済学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)入行、みずほ証券総合企画部長等を経て、2009年より執行役員、常務執行役員企画グループ長、国内営業部門長を経て、2016年より代表取締役副社長、2018年6月みずほ証券退任。現在は、株式会社イノベーション・インテリジェンス研究所代表取締役社長、リーディング・スキル・テスト株式会社代表取締役社長、一橋大学大学院経営管理研究科客員教授、京都大学経営管理大学院特別教授、SBI大学院大学経営管理研究科教授、株式会社産業革新投資機構社外取締役等を務めている。

主な著書

『プライベート・エクイティ投資の実践』中央経済社(幸田博人 編著)
『日本企業変革のためのコーポレートファイナンス講義』金融財政事情研究会(幸田博人 編著)
『オーナー経営はなぜ強いのか?』中央経済社(藤田勉/幸田博人 著)
『日本経済再生 25年の計』日本経済新聞出版社(池尾和人/幸田博人 編著)

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