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2020年8月27日

非上場株式が分散することのリスクと集約方法

株式が多数の株主により保有されていることを「株式の分散」と言います。上場企業は、不特定多数に株式を保有されていることが前提ですが、非上場企業の場合は、本来、株式の分散を想定しておらず、株式が分散することによるリスクもあります。今回は、非上場企業の株式が分散することのリスクと集約方法について解説します。

1 非上場株式が分散することのリスク

1-1 会社の意思決定が困難になるリスク

株主は、株式保有数や保有比率に応じて、「拒否権」や「支配権」を有します。株式が分散し、経営者の保有比率が下がった場合、役員の選解任や重要事項に関する意思決定が困難になるリスクがあります。経営者にとって敵対的な株主が現れた場合は、保有比率次第では、会社の意思決定が完全に滞ってしまう可能性もあります。

1-2 会社の経営者が訴訟されるリスク

例えば、株式の3%以上を保有する株主は、会社の会計帳簿又はこれに関する資料を閲覧する権利があります。帳簿閲覧権を行使して、会社の問題点を探し、それを元に株主代表訴訟を起こす可能性もあります。株主代表訴訟を起こされれば、事業運営に大きな支障をきたすリスクがあります。

2 非上場株式が分散する理由 - 相続による分散

株主に相続が発生すると、その所有していた株式は、相続の対象となります。非上場株式は、定款で譲渡制限株式と定められているケースもありますが、これは株式の譲渡に関して会社の承認が必要というものであり、相続が発生した場合は、譲渡制限株式であっても相続の対象となります。

例えば、株式を80株保有しているオーナーに相続が発生し、4人の相続人がいる場合は、各人に20株ずつ相続されます。さらに各人に相続が発生し、それぞれ4人の相続人がいた場合は、それぞれの相続人に対して、5株ずつ相続されます。1人が80株保有していた状態から、3世代で株主が16人(各人5株ずつ)に増え、株式が分散してしまいます。

非上場株式が分散する理由は、相続による分散が多く、設立から年数を経た(承継を経た)会社で分散している傾向にあります。

3 非上場株式の分散を防止する方法

3-1 譲渡制限株式条項を定款に定める

定款で譲渡制限株式と定めることで、会社の承認なしに株式が第三者に譲渡されることを防ぐことが可能です。ただし、定款で譲渡制限株式と定めても、これは株式の譲渡に関して会社の承認が必要ということに過ぎず、相続発生時の株式の分散を防ぐものではありません。

3-2 相続人等に対する売渡しの請求を定款に定める

会社法では、譲渡制限の付いた株式について、相続その他の一般承継によって会社の株式を取得した者に対し、その株式を会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができるとされています(会社法第174条)。

これにより、株主が亡くなり相続人が新たに株主となった場合には、会社がその株主に対しその株式を売り渡すことを請求し、株式の分散を防止することができます。

【関連】非上場株式の分散を防止する方法:相続人等に対する売渡請求について

3-3 従業員持株会、社団法人・財団法人、中小企業投資育成などの活用

経営者に有効的な株主として従業員持株会、社団法人・財団法人、中小企業投資育成を活用し、株式の分散を計画的に抑えることも可能です。

4 非上場株式を集約する方法

4-1 株主が協力的な場合

非上場企業においては、TOB(株式公開買い付け)ではなく、譲渡に応じてくれる株主との相対取引が一般的です。譲渡価格は、当事者間の合意により決定しますが、株式を取得する主体によって、異動時に適用される評価方式や税制が異なるため、注意が必要です。

4-2 株主が非協力的な場合

株主が譲渡に対して非協力的な場合は、少数株主から強制的に株式を取得する「スクイーズアウト」を検討します。

例えば、取得する側が90%以上の議決権を保有する場合は、「特別支配株主による株式等売渡請求」という手法により、少数株主から強制的に株式を買い取ることが可能です。

また、株主総会の2/3以上の議決権を持つ特別決議で可決されれば、「株式併合」や「株式交換」の手法により少数株主から強制的に株式を買い取ることが可能です。ただし、これらは、少数株主の権利を強力に制限するものであるため、適切な手続きと買取価格により実行されることが必要です。

【関連】「少数株主から株式を買い取る方法と少数株主の権利」

5 まとめ

非上場株式が分散すると、会社の意思決定が困難になるリスクや訴訟リスクが高まります。そのため、株式を集約しておくことが肝心ですが、株式の集約には、法律・税務などの専門的知識に加え、株主との丁寧な交渉が必要です。適切な段階を経ないまま集約を進めて、法的な効果が生じず無効になったというケースもあります。株式の集約をお考えの方には、是非、専門家にご相談されることをお勧めします。

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記事協力

幸田博人

1982年一橋大学経済学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)入行、みずほ証券総合企画部長等を経て、2009年より執行役員、常務執行役員企画グループ長、国内営業部門長を経て、2016年より代表取締役副社長、2018年6月みずほ証券退任。現在は、株式会社イノベーション・インテリジェンス研究所代表取締役社長、リーディング・スキル・テスト株式会社代表取締役社長、一橋大学大学院経営管理研究科客員教授、京都大学経営管理大学院特別教授、SBI大学院大学経営管理研究科教授、株式会社産業革新投資機構社外取締役等を務めている。

主な著書

『プライベート・エクイティ投資の実践』中央経済社(幸田博人 編著)
『日本企業変革のためのコーポレートファイナンス講義』金融財政事情研究会(幸田博人 編著)
『オーナー経営はなぜ強いのか?』中央経済社(藤田勉/幸田博人 著)
『日本経済再生 25年の計』日本経済新聞出版社(池尾和人/幸田博人 編著)

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