非上場企業の少数株式の流動化支援、株主構成・資本政策の課題解決

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非上場企業の少数株式の流動化支援、株主構成・資本政策の課題解決

2020年6月11日

同族会社とは?そのメリット、デメリット、少数株主との関係について

「売り家と唐様(からよう)で書く三代目」という諺があるように、昔から同族会社を何代にも渡り継続するのは難しいと言われています。

一方で、トヨタ自動車(豊田家)、キヤノン(御手洗家)、サントリー(鳥井・佐治家)、竹中工務店(竹中家)など「同族企業」に位置付けられる企業で、今日に至るまで日本経済をけん引する優良企業は、数多くあります。

国税庁が実施している「会社標本調査(平成30年度)」によると、調査対象約270万社のうち、96.6%が同族企業とされているように、日本は世界でも屈指の同族企業大国です。

今回は、どういった会社が同族会社として該当するのか、同族会社のメリットやデメリット、また少数株主との関係について解説していきます。

1 同族会社の定義とは

同族会社とは、「会社の株主の3人以下、並びにこれらと特殊な関係にある個人や法人が議決権の50%超を保有している会社」をいいます。具体的には、保有している株式や出資金の合計が、その会社が発行した株式の総数や出資金の半分超に相当している場合です。

上記の「特殊な関係にある個人や法人」とは、以下のとおりです。

  1. 1. 株主等の親族(配偶者、六親等以内の血族、三親等以内の姻族)
  2. 2. 株主等と事実上の婚姻関係にある者
  3. 3. 株主等の使用人
  4. 4. 株主等から受ける金銭やその他の資産により生計を立てている者
  5. 5. 株主等並びに株主等と特殊関係のある個人及び法人で他の会社を支配している場合の当該他の会社。なお、支配しているとは、発行済株式又は出資の50%超を所有している他の会社をいう。

2 同族会社における法人税法上の3つの特別規定

同族会社に該当する場合は、法人税法の3つの特別規定を確認しておく必要があります。多くのケースで「主要な株主=経営者」となる同族会社では、経営者の独断により“節税”と称した不正行為が行われやすい一面があります。そのため、税金の徴収漏れを防ぐことを目的として、法人税法で特別規定が設けられています。

(1)税務署長が法人税額を決める恐れがある

1つ目は、「行為又は計算の否認」という特別規定です。同族会社が法人税の負担を減らすための行為や計算を行ったと認めたときには、税務署長が法人税の課税所得や法人税額を決めることができるというものです。

(2)みなし役員と認められる従業員への賞与は必要経費にならない

2つ目は、「役員又は使用人兼務役員の範囲の特例」という特別規定です。同族会社の場合、以下の2点については、会社法上の役員でなくても法人税法上の「みなし役員」と判断されます。

  • ● 法人の使用人以外の者でその法人の経営に従事している者
  • ● 同族会社の使用人のうち、一定の所有割合を満たしている者で、その会社の経営に従事している者

「みなし役員」に支払われた給与及び賞与は役員と同じ取り扱いになります。なお、ここでいう「一定の所得割合」とは、以下になります。

  • ● 同族会社であるという判定基準となった上位3位以内の株主グループに入っていること
  • ● みなし役員と判定がなされた者(配偶者または両者で50%以上の株式を所有している会社も入れる)が5%を超す株式を所有していることこと
  • ● 所属する株主グループにおいて10%を超す株式を所有している

(3)社内留保した利益に対して課される「留保金課税」

3つ目は、「特定同族会社の留保金課税」という特別規定です。同族会社では、会社に利益が出た場合であっても、経営者は株主として自身が受け取る配当金への累進課税を避けるために、配当を行わずに利益を社内に留保しておくことがあります。

そこで、「特定同族会社の留保金課税」という特別規定では、一定の控除額を超える金額を留保した場合、通常の法人税とは別に課税をすると規定しています。課税時の税率は、以下のとおりです。

  • ● 年3,000万円以下の部分は10%
  • ● 年3,000万円超1億円以下の部分は15%
  • ● 年間1憶円超の部分は20%

なお、ここで言う「特定同族会社」とは、被支配会社のうち、被支配会社という判定のもとになった株主らのなかに、そうではない法人がいた場合に、その法人を除外して判定しても被支配会社になるものを指します。

3 同族会社のメリット・デメリット

同族会社のメリット・デメリットは、それぞれ以下のようになっています。

3-1 同族会社のメリット

同族会社のメリットは、主に3つあります。それぞれ詳しく説明していきます。

(1)迅速な意思決定が可能

通常の会社であれば意思決定に向け多くのプロセスが必要になりますが、同族経営の場合、経営者を含めて、関わりが深い人間のみが経営権を握っており、迅速な意思統一が可能です。「経営権の寡占」とネガティブに捉えられる場合もありますが、経営にスピード感が求められる昨今、ポジティブな側面もあると考えられています。

(2)経営の安定性

同族会社は安定した経営で長続きする企業が多いと言われています。理由としては、経営者を含めて、関わりが深い人たちの間で経営が行われているため、永続させようという意識が高まることと、一社長による経営期間が長いことが考えられます。

(3)経営理念の浸透

経営層が親族で占められているケースが多いことから、創業者の経営理念が浸透しやすく、安定した経営に繋がっていると考えられています。

3-2 同族会社のデメリット

同族会社のデメリットは、主に2つあります。それぞれ詳しく説明していきます。

(1)同族間の争い

相続を繰り返し、株主が分散する中で、経営支配株主と経営に直接かかわっていないが株主との間での争いが起きる場合が考えられます。長い歴史や血縁関係が存在する環境では問題はより根深く、複雑になっていきます。

(2)不健全な経営、少数株主のための経営が行われない恐れがある

同族会社の場合、良くも悪くも、経営権を寡占化してしまうため、健全な経営が難しくなり、少数株主のための経営を行うことへの意識が希薄になりがちです。

この点、上場企業においてはコーポレートガバナンスの観点から、少数株主の利益保護に関する指針が打ち出されるケースが増えてきましたが、残念ながら、非上場の同族会社では経営支配株主が少数株主を意識しないまま経営を行っているケースも存在します。

たとえば、会社の利益が主に役員報酬や退職慰労金、会社経費の私的流用などに分配され、少数株主への利益還元が行われないケースもあります。また経営者と特別な関係であるということだけで、能力に見合わないポストを与えたり、対立している優秀な人間を異動させたりと、会社を成長させるとは別の基準の不当な人事が発生しやすくなります。

4 まとめ

今回は、同族会社のメリットやデメリット、また少数株主との関係について、紹介しました。同族会社には、親族だからこそうまくいく面、逆に血縁関係が存在するために問題がより根深く、複雑になる面があります。NGSパートナーズでは、非上場・同族会社の株式の流動化、特に少数株主持分の売却支援をこれまで多数行ってまいりました。非上場・同族会社の株式売却を検討される際はお気軽に、NGSパートナーズまでご相談ください。

記事協力

幸田博人

1982年一橋大学経済学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)入行、みずほ証券総合企画部長等を経て、2009年より執行役員、常務執行役員企画グループ長、国内営業部門長を経て、2016年より代表取締役副社長、2018年6月みずほ証券退任。現在は、株式会社イノベーション・インテリジェンス研究所代表取締役社長、リーディング・スキル・テスト株式会社代表取締役社長、一橋大学大学院経営管理研究科客員教授、京都大学経営管理大学院特別教授、SBI大学院大学経営管理研究科教授、株式会社産業革新投資機構社外取締役等を務めている。

主な著書

『プライベート・エクイティ投資の実践』中央経済社(幸田博人 編著)
『日本企業変革のためのコーポレートファイナンス講義』金融財政事情研究会(幸田博人 編著)
『オーナー経営はなぜ強いのか?』中央経済社(藤田勉/幸田博人 著)
『日本経済再生 25年の計』日本経済新聞出版社(池尾和人/幸田博人 編著)

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