非上場企業の少数株式の流動化支援、株主構成・資本政策の課題解決

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非上場企業の少数株式の流動化支援、株主構成・資本政策の課題解決

2025年5月26日

非上場・同族企業の少数株式は、そもそも売却できるのか?

非上場企業、特に同族会社の少数株主にとって、保有している株式の売却を検討する局面はそう多くはありません。しかし、相続、退職、家業(親族)との関係の変化など、人生の節目において「自分の持ち株をどうするか」は、避けて通れないテーマになります。

ところが、いざ売却を考えたとき、多くの少数株主がまず直面するのが、「そもそもこの株式は本当に売却できるのか?」という、根本的な疑問です。

今回は、この「そもそも売却できるのか?」という問題を切り口に、非上場・同族企業における少数株主の置かれた現実や、その背景にある制度的・実務的な課題について考えてみたいと思います。

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1. 非上場・同族企業の少数株式は、「そもそも売却できるのか?」

上場株式であれば、証券取引所という市場が存在し、株価もリアルタイムで可視化されています。売却先も無数に存在し、クリック一つで取引が成立します。

しかし、非上場株式、特に同族企業の非上場株式には、市場も相場も存在しません。

「自分の株は、そもそも売却できるのか?」という、非常に単純かつ切実な不安が湧いてくるのも分かります。しかも、その株式が譲渡制限株式であれば、なおさらです。

結論から言えば、「売却は可能」です。

しかし、それはあくまで法的にはという話であって、実務的・現実的には「売れるが、非常に売りにくい」というのが実情です。

そもそも買い手が見つからず、仮に見つかっても価格交渉や会社の承認など複数のハードルが存在します。

以下では、その「売りにくさ」の実態について、制度的背景や実務面の現場感を交えながら掘り下げていきます。

2. 買い手が見つからないという現実

非上場企業の株式は、原則として自由に譲渡可能ですが、多くの同族会社では「譲渡制限株式」として、会社の承認が必要とされています(会社法107条)。この制限があることで、外部の第三者に勝手に株式を売却されることがなく、経営の安定が守られるというメリットがあります。

一方でこの仕組みは、少数株主にとって大きなハードルとなります。会社が承認しない限り、売却は成立しません。つまり、株主であっても「売りたい相手に自由に売れない」状況が発生します。

加えて、そもそも非上場株式は専門の流通市場が存在しないため、買い手探しも困難です。

3. 「会社が買い取ってくれないか?」という期待と現実

多くの少数株主は、売却にあたって「会社が買い取ってくれればよい」と考えます。あるいは「他の株主が買ってくれるのでは?」と期待します。

実際、会社側が自社株を買い取るケースもあります。しかしこれは、必ずしも会社に義務があるわけではありません。経営者としては、資金繰りや財務健全性を考えたうえで、買い取りを拒否する判断も当然あり得ます。特に、少数株主との関係性が希薄だったり、先代とのつながりによる名義株のような存在であった場合、円満な買い取り合意が難航することもあります。

また、他の株主、特に現経営陣やその親族などが株式の追加取得に関心を持つケースはありますが、価格交渉や持分比率の調整など、思った以上に交渉は複雑になります。

さらに、同族間での株式の売買においては、税務上「時価」での取引が求められるため、形式的に売買契約が成立しても、時価より著しく安い価格での譲渡は贈与とみなされるリスクもあります。取引の進め方には慎重な検討が必要です。

4. 「誰に・どうやって」売るのかという壁

仮に譲渡制限の承認が得られたとしても、少数株式を買いたいという第三者は非常に限られます。理由は単純で、非上場株式を少数だけ持っても、経営に関与できるわけでもなければ、配当が安定的に得られる保証もないからです。

また、情報開示が極めて限定的な同族企業では、財務内容や将来の見通しが不透明であることも多く、投資判断が困難です。こうした理由から、第三者による買い取り希望は極めて少数にとどまり、多くのケースで「買い手がいない」という結論に至ります。

つまり、法的には売却可能であっても、実務上は

  • ・買い手がいない
  • ・会社が承認しない
  • ・価格交渉がまとまらない

といった理由で、現実的には「売却できない」のと同義になってしまうことが多いのです。特に、株式を相続した相続人が、同族会社に関与していない場合などは、「知らない会社の株を、持ち続けるしかない」という状況に追い込まれがちです。

5. まとめ ― 「株式を持っていること」の意味を考える

非上場・同族会社の少数株式は、表面的には金融資産の一種ですが、実際には「関係性の象徴」であったり、「過去のしがらみ」であったりします。売却を検討する際には、経済合理性だけでなく、感情的・人的な側面も強く影響してくるのが現実です。

「そもそも売れるのか?」

という問いの背後には、法律・実務・人間関係といった多層的な問題が存在しています。だからこそ、少数株主が株式の整理を図るときには、信頼できる専門家とともに、冷静かつ戦略的に道筋を描くことが求められます。

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記事協力

幸田博人

1982年一橋大学経済学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)入行、みずほ証券総合企画部長等を経て、2009年より執行役員、常務執行役員企画グループ長、国内営業部門長を経て、2016年より代表取締役副社長、2018年6月みずほ証券退任。現在は、株式会社イノベーション・インテリジェンス研究所代表取締役社長、リーディング・スキル・テスト株式会社代表取締役社長、一橋大学大学院経営管理研究科客員教授、京都大学経営管理大学院特別教授、SBI大学院大学経営管理研究科教授、株式会社産業革新投資機構社外取締役等を務めている。

主な著書

『プライベート・エクイティ投資の実践』中央経済社(幸田博人 編著)
『日本企業変革のためのコーポレートファイナンス講義』金融財政事情研究会(幸田博人 編著)
『オーナー経営はなぜ強いのか?』中央経済社(藤田勉/幸田博人 著)
『日本経済再生 25年の計』日本経済新聞出版社(池尾和人/幸田博人 編著)

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