非上場企業の少数株式の流動化支援、株主構成・資本政策の課題解決

メール

非上場企業の少数株式の流動化支援、株主構成・資本政策の課題解決

2020年10月15日

非上場会社の会計帳簿閲覧謄写請求権とは?少数株主が知っておきたい要件と注意点

非上場株式の売却を検討する際、保有する株式の価値を考えるためには、発行会社の業績や財務状況に関する情報が重要になります。

しかし、経営に関与していない少数株主の場合、会社から十分な情報を得られず、株式の価値を検討するための資料が不足していることもあります。

株主が会社の情報を確認する方法の一つとして、会社法には「会計帳簿閲覧謄写請求権」が定められています。

もっとも、すべての株主が無条件で会計帳簿を閲覧できるわけではありません。請求できる株主の持株要件があり、請求する理由も明らかにする必要があります。また、一定の場合には会社が請求を拒むことも認められています。

本記事では、非上場会社の少数株主が知っておきたい会計帳簿閲覧謄写請求権について、対象となる資料、請求要件、会社が拒否できる場合、株式売却を検討する際の注意点を解説します。

〈 秘密厳守 〉
非上場・少数株式の流動化
(売却)
を支援します

全国無料相談受付中

1. 会計帳簿閲覧謄写請求権とは

1-1.  株主が会計帳簿などの閲覧・謄写を求める権利

会計帳簿閲覧謄写請求権とは、一定の要件を満たす株主が、会社の営業時間内に、会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧や謄写を請求できる権利です。

会社法第433条に定められており、会社の経営や会計処理を株主が確認するための少数株主権の一つです。

「閲覧」は資料を見ることを、「謄写」はコピーや写真撮影などによって内容を記録することをいいます。

株主は、会社から決算書などの計算書類を受け取ることがあります。しかし、決算書だけでは、個々の取引の内容や各勘定科目の内訳まで確認できない場合があります。

会計帳簿閲覧謄写請求権は、決算書の作成過程を支える帳簿や資料を確認するための手段となります。

1-2. 決算書の閲覧とは異なる

貸借対照表や損益計算書などの計算書類と、仕訳帳や総勘定元帳などの会計帳簿は異なります。

計算書類は、会社の一定期間の経営成績や財政状態をまとめたものです。一方、会計帳簿には、計算書類を作成する基礎となる個々の取引が記録されています。

そのため、会計帳簿を確認することで、決算書の数値がどのような取引から構成されているのかを、より詳しく確認できる場合があります。

ただし、会計帳簿閲覧謄写請求権を行使すれば、会社のあらゆる資料を自由に確認できるわけではありません。

2. 閲覧・謄写の対象となる資料

2-1. 仕訳帳や総勘定元帳などの会計帳簿

閲覧・謄写の対象となり得る会計帳簿には、一般に次のようなものがあります。

  • ・仕訳帳
  • ・総勘定元帳
  • ・現金出納帳
  • ・売上帳
  • ・仕入帳
  • ・売掛金元帳
  • ・買掛金元帳
  • ・定資産台帳

仕訳帳は、会社の日々の取引を発生順に記録した帳簿です。総勘定元帳は、仕訳帳の内容を勘定科目ごとに整理した帳簿です。

また、現金、売上、仕入れ、売掛金などの内訳を記録した補助簿も、会計帳簿に含まれる場合があります。

2-2. 会計帳簿に関する資料

会社法第433条は、会計帳簿だけでなく「これに関する資料」も対象としています。

一般には、会計帳簿を作成する基礎となった次のような資料が該当し得ると考えられています。

  • ・伝票
  • ・領収書
  • ・請求書
  • ・契約書
  • ・取引に関する書類

ただし、具体的にどの資料まで対象になるかは、資料の内容や会計帳簿との関連性によって判断されます。

会社が保有するすべての契約書や税務資料が当然に対象となるわけではありません。何を確認するために、どの帳簿や資料が必要なのかを具体的に整理することが重要です。会計帳簿に関する資料の範囲については、実務上も見解や争いがあるため、個別の判断が必要です。

3. 会計帳簿閲覧謄写請求権を行使できる株主

3-1. 原則として議決権または株式の3%以上が必要

会計帳簿の閲覧・謄写を請求できるのは、原則として次のいずれかに該当する株主です。

  • ・総株主の議決権の3%以上の議決権を有する株主
  • ・発行済株式の3%以上の株式を有する株主

発行済株式数を基準とする場合、会社が保有する自己株式は除かれます。

また、定款によって3%を下回る割合が定められている場合は、その割合が適用されます。一人の株主が単独で3%以上を保有していなくても、複数の株主が共同して請求し、合計で要件を満たす方法も考えられます。

なお、持株比率によって行使できる少数株主権は異なります。

 

3-2. 請求理由を明らかにする必要がある

株主が会計帳簿の閲覧・謄写を請求する場合は、請求の理由を明らかにしなければなりません。

単に、
「会社の経営状況を詳しく知りたい」
と記載するだけでは、確認したい事項や、求める資料との関係が明確でない可能性があります。

実際に請求する際には、例えば次の点を整理する必要があります。

  • ・何を確認したいのか
  • ・なぜ確認する必要があるのか
  • ・どの期間の資料が必要なのか
  • ・どの勘定科目や取引を確認したいのか
  • ・確認事項と請求する資料がどのように関連するのか

請求理由は、会社が対象資料を特定し、法律上の拒絶事由があるかどうかを判断できる程度に具体化する必要があります。

4. 株式売却の検討を理由に請求できるのか

非上場株式の売却を検討する株主にとって、会社の財務情報は、株式の価値や売却条件を考えるための重要な材料となります。

もっとも、
「株式を売却したいので、すべての会計帳簿を見せてほしい」
という理由だけで、希望する資料がすべて開示されるとは限りません。

会計帳簿閲覧謄写請求権は、株式売却のための資料収集制度として設けられたものではなく、株主としての権利を確保・行使するための調査を目的とする制度です。

そのため、株式の売却を検討している場合でも、株主として何を確認する必要があり、その確認のためになぜ対象資料が必要なのかを整理する必要があります。

また、非上場株式の価値を検討するために必要な資料は、会計帳簿に限られません。

例えば、次のような資料も重要になります。

  • ・過去数期分の決算書
  • ・税務申告書
  • ・勘定科目内訳明細書
  • ・株主名簿
  • ・定款
  • ・事業計画
  • ・不動産や有価証券などの保有資産に関する資料
  • ・偶発債務や訴訟などに関する情報

これらの資料が、すべて会計帳簿閲覧謄写請求権の対象になるとは限りません。

したがって、株式売却を検討する際は、直ちに法的な請求を行うのではなく、まずは会社に対して必要な情報の提供を相談することも選択肢となります。

5. 会社が請求を拒否できる場合

5-1. 会社は自由に拒否できるわけではない

株主が請求理由を明らかにし、法律上の持株要件を満たしている場合でも、一定の事情があるときは、会社が閲覧・謄写を拒むことができます。

会社法第433条第2項では、主に次のような拒絶事由が定められています。

  • ・株主としての権利の確保または行使に関する調査以外の目的による請求
  • ・会社の業務を妨げ、株主共同の利益を害する目的による請求
  • ・請求者が会社と実質的な競争関係にある事業を営み、または従事している場合
  • ・帳簿から知った情報を、利益を得て第三者に提供する目的による請求
  • ・過去2年以内に、帳簿から知った情報を利益を得て第三者に提供したことがある場合

したがって、会社が単に、

「開示したくない」
「株主との関係が良くない」
「情報量が多く対応が大変である」

というだけで、当然に拒否できるわけではありません。

一方で、株主側も、法律上の要件を満たせば、目的や範囲を問わずあらゆる資料を閲覧できるわけではありません。請求目的と対象資料の関係を慎重に検討する必要があります。

5-2. 会社と競争関係にある場合の注意

請求者が発行会社と実質的な競争関係にある事業を営んでいる場合は、会社が請求を拒むことができる可能性があります。

例えば、株主本人が競合事業を行っている場合だけでなく、株主が競合会社と密接な関係にある場合などにも問題となることがあります。

会計帳簿には、取引先、原価、利益率、販売状況など、会社の事業上重要な情報が含まれている可能性があるためです。

この拒絶事由に該当するかどうかは、株主と会社との具体的な関係を踏まえて判断する必要があります。

6. 楽天とTBSの事例

会計帳簿閲覧謄写請求権に関する事例として、楽天グループの子会社がTBSに会計帳簿などの閲覧・謄写を求めた事案があります。

TBS側は、請求者側が自社と実質的な競争関係にあることなどを理由に、請求を拒否しました。

裁判では、会社と実質的な競争関係にある株主からの請求と、会社法上の拒絶事由との関係が問題となりました。

ただし、この事例は、上場会社間の経営統合をめぐる特殊な事案です。その結論が、一般的な非上場会社の少数株主による請求に、そのまま当てはまるわけではありません。

会計帳簿の閲覧・謄写が認められるかどうかは、請求理由、請求する資料、株主と会社との関係などによって個別に判断されます。

7. 権利行使の前に考えたいこと

会計帳簿閲覧謄写請求権は、少数株主が会社の状況を確認するための重要な権利です。

一方で、権利を行使することによって、発行会社との関係が緊張する可能性もあります。

特に、株式の売却には譲渡承認手続などで発行会社の関与が必要となる場合があるため、会社とのコミュニケーションをどのように進めるかも重要です。

株式売却を検討している場合には、次のような順序で対応することが考えられます。

  • ①手元にある決算書や株主関係資料を整理する
  • ②株式の価値を検討するために不足している情報を確認する
  • ③発行会社に資料提供を相談する
  • ④売却方法や買い手候補を検討する
  • ⑤必要に応じて、会計帳簿閲覧謄写請求権の行使を検討する

会計帳簿の閲覧・謄写を請求すること自体が目的ではありません。

株式売却に必要な情報を把握し、発行会社との関係にも配慮しながら、売却に向けた現実的な方法を検討することが重要です。

8. まとめ

会計帳簿閲覧謄写請求権は、一定の持株要件を満たす株主が、会社の会計帳簿や関連資料の閲覧・謄写を求めることができる権利です。

ただし、請求する際には理由を明らかにする必要があり、会社法上の拒絶事由がある場合には、会社が請求を拒むこともあります。

また、非上場株式の売却を検討しているからといって、必要な資料がすべて開示されるとは限りません。

株式の売却を考える際には、まず、現在保有している資料と不足している情報を整理したうえで、発行会社への情報提供の依頼、株式価値の検討、買い手候補の探索などを総合的に進める必要があります。

日本成長支援パートナーズでは、個人・法人が保有する非上場企業の少数株式について、株式価値の検討、買い手候補の探索、発行会社との調整など、売却に向けた支援を行っています。

保有する非上場株式の売却や、発行会社から十分な情報を得られずお困りの場合は、ご相談ください。

〈 秘密厳守 〉
非上場・少数株式の流動化
(売却)
を支援します

全国無料相談受付中

関連記事

 

記事協力

幸田博人

1982年一橋大学経済学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)入行、みずほ証券総合企画部長等を経て、2009年より執行役員、常務執行役員企画グループ長、国内営業部門長を経て、2016年より代表取締役副社長、2018年6月みずほ証券退任。現在は、株式会社イノベーション・インテリジェンス研究所代表取締役社長、リーディング・スキル・テスト株式会社代表取締役社長、一橋大学大学院経営管理研究科客員教授、京都大学経営管理大学院特別教授、SBI大学院大学経営管理研究科教授、株式会社産業革新投資機構社外取締役等を務めている。

主な著書

『プライベート・エクイティ投資の実践』中央経済社(幸田博人 編著)
『日本企業変革のためのコーポレートファイナンス講義』金融財政事情研究会(幸田博人 編著)
『オーナー経営はなぜ強いのか?』中央経済社(藤田勉/幸田博人 著)
『日本経済再生 25年の計』日本経済新聞出版社(池尾和人/幸田博人 編著)

« »