非上場会社の株主であっても、一定の要件のもとで会社に対して株主名簿の閲覧や謄写を請求することができます。
株主名簿には、株主の氏名・住所や保有株式数などが記載されており、他の株主や株主構成を確認するための重要な資料です。
特に、保有する非上場株式を第三者へ売却しようとする場合、買い手から対象会社の株主構成について情報を求められることがあります。
上場企業では大株主などの情報が公開されていますが、非上場企業では株主構成が外部から分からないケースも少なくありません。
そこで今回は、非上場会社の株主が株主名簿を確認するために知っておきたい「株主名簿閲覧謄写請求権」について解説します。
1 株主名簿の閲覧謄写請求権とは
1-1 株主は株主名簿の閲覧・謄写を請求できる
株式の売買において、買い手は通常、対象企業の株主構成を知りたがります。株主が分からない状態で買い取りが成立する可能性は低いので、株式を保有している売り手側が発行会社から株主名簿をもらうようお願いすることになります。
株主名簿の閲覧謄写請求権は株主側に認められた権利であるため、売却を考えている株主はこれを活用することができます。
1-2 少数株主でも行使が可能
株主名簿閲覧謄写請求権は、対象企業の株式を1株でも持っていれば行使することができます。ちなみに、株主だけでなく債権者にも権利が認められています。
株主から株主名簿の閲覧および謄写請求がなされた場合、正当な理由がない限り、企業側は原則として応じなければなりません。
2 株主名簿閲覧謄写請求を受けた会社側の対応は
2-1 会社側が株主名簿を見せたがらない理由
一方、会社側にとっては、株主名簿はできるだけ見せたくない場合が多いものです。特に非上場の同族企業などにおいては、株主構成を明らかにしていないところがほとんどです。
まず、株主名簿には、株主の持ち株数だけでなく住所や氏名といった個人情報が記載されています。これを他の株主に見せることは、個人情報保護の観点から問題があると捉えられるからです。
また、少数株主が他の株主と連絡を取って、多数派工作を行ったうえで会社乗っ取りなど何らかのアクションを会社に仕掛けることもないとは言えません。
2-2 株主名簿閲覧謄写請求が会社側に拒絶される場合
会社側が、株主名簿閲覧謄写請求を拒絶できるケースとしては、請求者が権利の確保や行使に関する調査以外の目的で行使した場合、会社の業務遂行を妨げる目的で行使した場合、会社の業務と実質的に競合関係にある場合、株主名簿の閲覧や謄写で得た情報を第三者に通報して利益を得る目的の場合、といったことが会社法に定められています。
しかし、同じく少数株主でも行使できる権利として、別記事で紹介した「非上場会社の決算書・会計情報を確認するには?会計帳簿閲覧謄写請求権を解説」と比べると、会社側が拒絶できるケースは限られていると言えます。
例えば、競争相手に財務状況や売り上げの詳細を見られるのに比べれば、株主名簿を見られたからといって、営業に与えるダメージは小さいと一般的に考えられるからです。
こうした理由から、実質的に競争関係にあるものからの株主名簿閲覧謄写請求を拒絶できるという事由を削除すべきという意見もあります。
3 まとめ ― 非上場株式の売却は正確な情報把握から
株主名簿閲覧謄写請求権は、非上場株式を売却しやすくするために重要な情報を得る手段として有効です。株主構成という基礎的な情報が得られなければ、買い手を見つけることが非常に困難になると予想されます。
非上場株式を少数保有し続けることにはリスクが伴います。これについては本サイト内の別記事「少数株主として非上場株式を保有するリスクとは)」に詳しく解説しているので、ぜひご参照ください。
さまざまな情報が公開されている上場株式と違って、非上場株式の売却に際しては、今回紹介した株主構成の把握をはじめ、多くの情報障壁が存在します。それらをクリアして有望な買い手を見つけるために、まずは専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
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記事協力
幸田博人
1982年一橋大学経済学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)入行、みずほ証券総合企画部長等を経て、2009年より執行役員、常務執行役員企画グループ長、国内営業部門長を経て、2016年より代表取締役副社長、2018年6月みずほ証券退任。現在は、株式会社イノベーション・インテリジェンス研究所代表取締役社長、リーディング・スキル・テスト株式会社代表取締役社長、一橋大学大学院経営管理研究科客員教授、京都大学経営管理大学院特別教授、SBI大学院大学経営管理研究科教授、株式会社産業革新投資機構社外取締役等を務めている。
主な著書
『プライベート・エクイティ投資の実践』中央経済社(幸田博人 編著)
『日本企業変革のためのコーポレートファイナンス講義』金融財政事情研究会(幸田博人 編著)
『オーナー経営はなぜ強いのか?』中央経済社(藤田勉/幸田博人 著)
『日本経済再生 25年の計』日本経済新聞出版社(池尾和人/幸田博人 編著)


















