非上場企業の少数株式の流動化支援、株主構成・資本政策の課題解決

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非上場企業の少数株式の流動化支援、株主構成・資本政策の課題解決

2020年10月29日

非上場企業の後継者問題を解決!MBOを活用した事業承継とは

M&Aの手法のひとつであるMBO(マネージメント・バイアウト)は、親会社からの独立や上場廃止を目的として会社の経営陣や役員が、オーナーから株式を買い取り、経営権を取得することをいいます。また、近年は、後継者問題を解決する手段として中小企業でもMBOが活用されるケースが増加しております。今回は、「非上場企業におけるMBOを活用した事業承継」について解説します。

1 事業承継におけるMBOとは

事業継承とは、オーナーが保有する財産と経営権を後継者に引き継ぐことを指します。この時、後継者別に3つの事業承継が考えられます。1つ目は、ご子息などの親族に引き継ぐ「親族内承継」。2つ目は、経営陣や従業員などに引き継ぐ「親族外承継」。そして、3つ目は、第三者に売却する「M&A」です。MBOとは、Management Buy-out(マネージメント・バイアウト)の略であり、会社の経営陣、役員に株式を譲渡し、経営権を移転することで事業承継を行うもので、一般的な親族外承継に近いものです。ただ、一般的な事業承継が、相続や贈与という形で後継者に株式を取得させるのに対して、MBOは、譲渡(対価のやりとり)により株式を取得させます。つまり、後継者となる経営陣、役員は、自らオーナー(現経営者)から株式を購入して経営権を移譲してもらいます。

2 MBOを活用した事業承継の目的と背景

MBOを活用した事業承継の目的は、主に後継者問題の解決です。少子高齢化が進行する中で、特に中小企業は人手不足や後継者不足に悩まされています。利益を生み出している優良な企業でも、後継者がいなければ存続できず、現経営者が引退するタイミングで廃業という選択肢を選ばざるを得ません。このような状況を解決する一つの方法として、MBOを活用した事業承継の件数が、近年、増えています。

3 MBOを活用した事業承継のメリット

では、MBOを活用した事業承継のメリットには、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。

メリット① — 少額の出資で事業会社の経営権を取得できる

MBOを活用した事業承継では、後継者となる経営陣、役員が、オーナー(現経営者)から株式を購入して経営権を移譲してもらいます。しかし、多くの場合、買収資金が不足しているため、SPC(Specific Purpose Company:特別目的会社)を設立し、そこを経由して金融機関から買取資金を調達することで、後継者は比較的少ない手許資金で、事業会社の株式を取得することが可能になります。

メリット② — 経営の移行がスムーズに行える

MBOを実行して会社の経営陣、役員が会社を引き継ぐ場合は、企業の理念や風土、経営方針、業務内容を正確に把握しています。そのため、承継に伴う混乱も起きにくく、安定的に経営を移譲していくことが可能です。

メリット③ — 従業員の理解を得やすい

MBOを活用した事業承継は従業員の理解を得やすいというメリットがあります。仮に第三者に売却するM&Aによる事業承継を行った場合、外部の者が経営を引き継ぐことになります。異なる理念や風土、経営方針により従業員と衝突するリスクも考えられますが、MBOで会社の経営陣、役員が会社を引き継ぐ場合は、そのような軋轢が起きるリスクは低いと考えられます。

4 MBOを活用した事業承継のデメリット

では、MBOを活用した事業承継のデメリットには、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。

デメリット① — MBO成立後、金融機関から調達した買取資金が企業の債務になる

MBOを活用した中小企業の事業承継は、上記メリット①で触れたように多くの場合、SPCを介して金融機関などからの融資を受けて経営権を取得します。この負債は、企業の債務となり、企業の将来キャッシュフローから返済されていきます。買収価格や調達額次第では、企業の財務状況を棄損させてしまう可能性もあります。

デメリット② — 経営体質が変化しない

メリット②で触れましたが、MBOを活用した事業承継を行った場合、会社の経営陣、役員は、企業の理念や風土、経営方針を把握しています。言い換えれば、「今の企業の色に染まっている」ケースも考えられます。「経営の移行がスムーズに行える」という観点ではプラスですが、後継者の方針次第では、これまでの延長で経営が行われ、逆に変化が起きない可能性もあります。

5 まとめ

MBOを活用した事業承継は、買収価格や調達額次第で、企業の財務状況を棄損させ、今後の経営を困難にしてしまう可能性もあります。メリット、デメリットを正しく理解し、株価の算定、資金の調達方法を適正に行うためにも、まずは専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

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記事協力

幸田博人

1982年一橋大学経済学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)入行、みずほ証券総合企画部長等を経て、2009年より執行役員、常務執行役員企画グループ長、国内営業部門長を経て、2016年より代表取締役副社長、2018年6月みずほ証券退任。現在は、株式会社イノベーション・インテリジェンス研究所代表取締役社長、リーディング・スキル・テスト株式会社代表取締役社長、一橋大学大学院経営管理研究科客員教授、京都大学経営管理大学院特別教授、SBI大学院大学経営管理研究科教授、株式会社産業革新投資機構社外取締役等を務めている。

主な著書

『プライベート・エクイティ投資の実践』中央経済社(幸田博人 編著)
『日本企業変革のためのコーポレートファイナンス講義』金融財政事情研究会(幸田博人 編著)
『オーナー経営はなぜ強いのか?』中央経済社(藤田勉/幸田博人 著)
『日本経済再生 25年の計』日本経済新聞出版社(池尾和人/幸田博人 編著)

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