はじめに
- 「非上場株式を売却したいが、何から始めればよいのか分からない」
- 「会社に買い取りを相談する前に、何を準備しておけばよいのか」
非上場株式の売却を考え始めた方の中には、このような疑問を持つ方も少なくありません。
上場株式であれば、証券取引所を通じて市場価格で売却することができます。一方、非上場株式には一般的な売買市場がなく、売却先や売却価格があらかじめ決まっているわけではありません。
そのため、実際に売却を進める際には、保有している株式の状況を確認したうえで、株式の価値や売却先、発行会社とのコミュニケーションなどについて、個別に検討していく必要があります。
ただし、売却に必要な情報や資料を、最初からすべて自分でそろえる必要はありません。
まずは、現在分かっていることや手元にある資料を整理し、分からないことを一つずつ確認していくことが、売却を検討する第一歩となります。
本記事では、非上場企業の少数株式を売却する際に、あらかじめ確認・整理しておきたいポイントについて解説します。
1. 保有している株式の状況を確認する
まず確認しておきたいのが、自分が「どの会社の株式を、どのくらい保有しているのか」という基本的な情報です。
具体的には、次のような項目が挙げられます。
- ・保有株式数
- ・発行済株式総数
- ・持株比率
- ・株主名簿上の名義
- ・株券の有無
自ら出資して取得した株式であれば、こうした情報を把握していることも多いでしょう。
一方、相続や贈与によって取得した株式や、かなり以前から保有している株式では、「何株保有しているのか」「会社全体の何%にあたるのか」を正確に把握していないケースもあります。
保有株式数や持株比率は、その後の売却の進め方を検討するうえでの基本的な情報となります。
もっとも、すべての情報が手元になければ売却を検討できないわけではありません。
まずは現在把握している情報を整理し、不明な点があれば、その確認方法も含めて検討していくとよいでしょう。
2. 株式の譲渡制限について確認する
非上場会社では、一般的に、株式を第三者に売却する際に発行会社の承認を必要とする「譲渡制限」が設けられています。
そのため、非上場株式の売却を検討する際には、自分が保有する株式に譲渡制限が設けられているかを確認しておきましょう。
譲渡制限の有無は、会社の定款や登記事項証明書などで確認することができます。
ただし、譲渡制限が設けられているからといって、株式を売却できないわけではありません。
第三者への売却を進める場合には、買い手を決めたうえで、発行会社に対して株式の譲渡を承認するよう請求するなど、会社法に定められた手続きを進めることになります。
譲渡制限株式の仕組みや売却方法については、「譲渡制限株式の売却方法」で詳しく解説しています。
3. 発行会社とのこれまでの関係を整理する
非上場株式の売却を検討する際には、発行会社とのこれまでの関係や、株式の売却について過去にどのようなやり取りをしてきたかを整理しておくことも大切です。
たとえば、次のような点を確認しておくとよいでしょう。
- ・これまで発行会社に株式の売却や買い取りについて相談したことがあるか
- ・発行会社から買取価格を提示されたことがあるか
- ・売却について、経営陣や担当者とどのようなやり取りをしてきたか
- ・現在も発行会社と連絡を取れる関係にあるか
非上場株式の売却では、発行会社が株式を買い取るケースもあります。
また、第三者への売却を検討する場合でも、買い手が検討するために必要な資料の開示をお願いしたり、譲渡承認などの手続きを進めたりするために、発行会社とのコミュニケーションが必要になることがあります。
そのため、売却を考え始めた段階で、発行会社とのこれまでのやり取りや関係性を一度整理し、その後の進め方を考えることが大切です。
4. 株式の価値を検討するための資料を整理する
非上場株式には、上場株式のように市場で日々取引される株価がありません。そのため、売却を検討する際には、発行会社の財務状況や事業内容などをもとに、株式の価値を個別に検討する必要があります。
株式の価値を検討するためには、株主自身が保有している資料に加え、必要に応じて発行会社から情報や資料を取得することもあります。
まずは、次のような資料が手元にあるか確認してみましょう。
- 1. 招集通知などの株主総会関係資料
- 2. 決算書・計算書類
- 3. 株主名簿
- 4. 定款
- 5. 会社案内など、事業内容が分かる資料
- 6. 過去に発行会社から買取価格の提示を受けている場合は、その資料
株主総会の招集通知からは、計算書類や事業報告、配当に関する情報などを、まとめて把握できる場合があります。
特に、決算書は発行会社の財務状況を把握し、株式の価値を検討するための重要な資料です。
また、株主名簿は、自分の持株比率だけでなく、発行会社の株主構成を確認するための資料となります。
株主名簿が手元にない場合には、まず発行会社に確認してみることも一つの方法です。
株主には一定の要件のもとでは、株主名簿の閲覧・謄写を請求する権利も認められています。
ただし、こうした請求を行うことで、株主が株式の売却を検討していることを発行会社が意識し、その後の関係性に影響する可能性もあります。
実際に請求するかどうかは、発行会社とのこれまでの関係や今後の売却方針も踏まえて、慎重に判断することが大切です。
5. すべてを準備してから相談する必要はない
ここまで、非上場株式の売却を検討する際に確認・整理しておきたい事項をご紹介しました。
ただし、これらをすべて確認し、必要な資料をそろえてからでなければ、専門家に相談できないわけではありません。
たとえば、「自分が何株保有しているのかは分かるが、持株比率が分からない」「決算書は持っているが、株主名簿は手元にない」といった状態でも、まずは相談することができます。
また、株式の価値をどのように考えるのか、誰に売却できる可能性があるのか、発行会社とどのようにコミュニケーションを取っていくのかといった点まで、株主自身であらかじめ決めておく必要はありません。
手元にある情報や資料をもとに現状を整理し、その後の進め方について専門家と一緒に検討していくことも一つの方法です。
日本成長支援パートナーズでは、保有比率にかかわらず、非上場企業の少数株式の売却を支援しています。
株式価値の検討から売却先の探索、発行会社をはじめとする関係者との調整まで、売却に向けた一連のプロセスをサポートしています。
「何から始めればいか分からない」という段階でも、ご相談いただけます。
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記事協力
幸田博人
1982年一橋大学経済学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)入行、みずほ証券総合企画部長等を経て、2009年より執行役員、常務執行役員企画グループ長、国内営業部門長を経て、2016年より代表取締役副社長、2018年6月みずほ証券退任。現在は、株式会社イノベーション・インテリジェンス研究所代表取締役社長、リーディング・スキル・テスト株式会社代表取締役社長、一橋大学大学院経営管理研究科客員教授、京都大学経営管理大学院特別教授、SBI大学院大学経営管理研究科教授、株式会社産業革新投資機構社外取締役等を務めている。
主な著書
『プライベート・エクイティ投資の実践』中央経済社(幸田博人 編著)
『日本企業変革のためのコーポレートファイナンス講義』金融財政事情研究会(幸田博人 編著)
『オーナー経営はなぜ強いのか?』中央経済社(藤田勉/幸田博人 著)
『日本経済再生 25年の計』日本経済新聞出版社(池尾和人/幸田博人 編著)

















