非上場企業の少数株式の流動化支援、株主構成・資本政策の課題解決

メール

非上場企業の少数株式の流動化支援、株主構成・資本政策の課題解決

2022年6月7日

少数株式を売却するために準備しておくべきこととは

非上場の少数株式を売却しようとする際、買取価格を含む条件が真っ先に気になる、という株主の方もいらっしゃるでしょう。しかし、売却手続きを進める前に準備や注意しておくべき大切なポイントがいくつかあります。売却手続きをスムーズに運ぶためにも、ぜひ参考にしてみてください。

1 少数株式の売却準備で大切なポイント

1-1.会社側とコミュニケーションが取れる状態であること

非上場企業の少数株主の皆さんは、株式発行会社の経営陣と日頃どれくらい経営や株式の保有意向に関するやり取りをしているでしょうか。

少数株主になる経緯は様々ですが、経営陣とのコミュニケーションという点では、最初に「お付き合い」で株主になって以来、積極的に関与することなく疎遠になってしまっていたり、親族の死去などに伴い意図せず相続して(株主になって)以来、一度も会ったことないなど、不足しているケースが多々あります。

会社にとっても普段からコミュニケーションを十分に取っていない株主については不明な点も多いことなどから、少数株主がいざ株式を会社に買い取ってもらおうとしても上手くいかないケースがよくあります。経営陣の立場に立ってみれば、面識のない少数株主が突然会社にやってきて「株を買い取ってほしい」と言われても戸惑うのはある意味当然で、仮に買い取るとしてもタイミングも検討する必要があります。

自ら株式の買い手を見つけて会社と交渉するケースも同様です。特に、普段から経営陣に対して敵対的な言動を繰り返しているような場合、その買い手も敵対的と会社から見なされて、会社側から必要以上に警戒されてしまいスムーズに売却交渉が進まないケースもあります。敵対的と見なされた買い手は、経営陣とコミュニケーションが取れなくなり、買った株式が塩漬けになってしまうリスクが高まるため、買取価格を大幅にディスカウントせざるを得ません。

将来、保有する株式の売却を考えている少数株主にとって、日頃から経営陣といつでも話ができる状況を作っておくことは非常に大切なのです。その上で、将来適切なタイミングで売却を考えており、その際、敵対する意思はないという点をしっかりと伝えておくことが、スムーズに売却を進めるためには重要だと言えます。

1-2.セルフデューデリジェンスをしっかり行うこと

セルフDD(デューデリジェンス)とは、つまり自分がどういった会社の株式(銘柄)を、どの程度保有し、会社からどういう株主と認識されているか、売却条件も含め自分は保有している株式をどのようにしていきたいかということを、しっかり把握するということです。

会社について知るためには、株主総会の招集通知を確認したり、実際に株主総会に出席することで理解は深まります。特に株主総会には、経営陣が出席するので、資料からは分からない経営陣の人となりなどを知る、また自身を会社側に知ってもらう重要な機会です。

株主名簿に目を通すことで、自らの立ち位置を確認することも大切です。非上場企業では株主構成を明らかにせず、株主名簿も見せたがらない経営者も中にはいますが、株主名簿の閲覧謄写請求権は1株でも持っていれば株主側の権利として認められています。

株主側が権利の確保や行使に関する調査以外に使用する、会社の業務遂行を妨げる目的で使用する、あるいは名簿の閲覧や謄写で得た情報を第三者に渡して利益を得る、といった特殊な目的である場合を除いて、会社は株主名簿の閲覧謄写請求権を拒否することが出来ません(それでも過去、閲覧請求した株主以外、全て黒塗りにして開示してきた会社がありました)。

株式の買い手候補を探す際に、株主構成は基本的かつ非常に重要な情報です。ただ、株主名簿の閲覧謄写請求もうまく活用しなければ、会社側から敵対的と見なされてしまうので、会社側とコミュニケーションを取る中でうまく株主名簿を取得されることをお勧めします。

このように会社や自分の立ち位置を把握する中で、保有している株式をどのようにしていきたいかということを売却条件も含め、明確にしていくことが大切です。

1-3.信頼できる仲介者(アドバイザー)選び

一般的に、少数株主が自ら株式の買い手を見つけ、会社と交渉するのは非常にハードルが高いと言えます。仮に普段から会社とコミュニケーションを取っている株主でも、いざ交渉となると直接は言いにくいことが出てくるケースもあるでしょう。

そのため、多くの場合は信頼できる仲介者を通して売却を進めることになるのですが、最近は素性のよく分からない怪しげなアドバイザーが増えているので注意が必要です。

例えば、仲介者が相見積もりを取らずに売却手続きを進めようとするケースがありますが、相見積もりがなければ売り手は相場観がわからないうえ、比較検討もできません。「買うか買わないか」の2択だけで話を進めようとするアドバイザーには注意が必要です。

また、アドバイザーの専門分野もしっかり調べる必要があります。非上場企業株式の売買と一口に言っても、経営権が移動する(株式の比率が50%以上の)事業承継やМ&Aを得意とするのか、少数株式の売買を得意とするのか等、アドバイザーによって得意分野は異なります。その他、取り扱う案件の規模や報酬体系なども考慮に入れる必要があります。

過去に少数株式の売却実績が多数あり、売り手側に寄り添ってくれるアドバイザーであれば、非常に頼りになることでしょう。

2 まとめ ― 少数株式売却の準備はしっかりと

非上場企業の少数株主が保有している株式を売却したいと思い立っても、すぐにできるものではありません。やはり日頃から会社とコミュニケーションを取って良好な関係を築いておく、セルフDDをしっかり行い自分の立ち位置を把握しておく、信頼できるアドバイザーを探しておく、といった準備が大切になります。売却を焦って不利な条件で買い取られてしまったり、悪質な仲介業者に騙されたりしないように気を付けてください。

関連記事

 

記事協力

幸田博人

1982年一橋大学経済学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)入行、みずほ証券総合企画部長等を経て、2009年より執行役員、常務執行役員企画グループ長、国内営業部門長を経て、2016年より代表取締役副社長、2018年6月みずほ証券退任。現在は、株式会社イノベーション・インテリジェンス研究所代表取締役社長、リーディング・スキル・テスト株式会社代表取締役社長、一橋大学大学院経営管理研究科客員教授、京都大学経営管理大学院特別教授、SBI大学院大学経営管理研究科教授、株式会社産業革新投資機構社外取締役等を務めている。

主な著書

『プライベート・エクイティ投資の実践』中央経済社(幸田博人 編著)
『日本企業変革のためのコーポレートファイナンス講義』金融財政事情研究会(幸田博人 編著)
『オーナー経営はなぜ強いのか?』中央経済社(藤田勉/幸田博人 著)
『日本経済再生 25年の計』日本経済新聞出版社(池尾和人/幸田博人 編著)

«