非上場企業の少数株式の流動化支援、株主構成・資本政策の課題解決

メール

非上場企業の少数株式の流動化支援、株主構成・資本政策の課題解決

2020年7月9日

今後のコーポレートガバナンス・コードの改訂議論と政策保有株式の売却

2020年2月20日、東京証券取引所(以下、東証)が市場再編の時期を2022年4月に決めたと発表しました。現在の1部、2部、ジャスダック、マザーズの4市場が、再編後は「プライム」、「スタンダード」、「グロース」の3市場に変わる予定で、それぞれの市場上場に向けた新たなガバナンスの基準が設けられる見込みです。その中で、政策保有株式についても、現在のコードよりもさらに突っ込んだ内容が示される可能性があります。今回は、2018年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードで明示された政策保有株式の縮減(売却)と今後のコーポレートガバナンス・コードの改訂議論について説明します。

1 改訂コーポレートガバナンス・コードにおける政策保有株式の位置づけ

1-1 改訂コーポレートガバナンス・コードで明示された政策保有株式の縮減

2018年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードでは、上場企業に対して政策保有株式の保有状況を明確化し、縮減を求める内容が示されました。

政策保有株式とは、企業が株価上昇や配当から利益を得るといった純粋な投資以外の目的で保有している株式のことです。金融機関や取引先企業と株式を持ち合う形態が多く、経営の安定化につながるという理由で、多くの日本企業が政策保有株式を持ち続けてきました。

しかし、こうした政策保有株式を持ち続けることは本質的な企業価値向上につながらない上、経営資源の無駄遣いだという批判が投資家から出てくるようになりました。目的のよく分からない株を保有するぐらいなら、自社の競争力向上に資本を投入すべきという意見です。

また、当然のことながら株式を持ちあう相手から自社の経営に対して厳しい要求が出ることは稀で、要するにこれまでは株主と企業との間でなあなあの関係が続いていたということです。これは自社の経営に口を出されたくない経営陣にとっては望ましい状況ですが、健全なコーポレートガバナンスという観点からは問題となっていました。株式持ち合いに代表される政策保有株式は日本企業特有の形態であったため、特に外国人投資家などから改善を求める声が高まっていった経緯があります。

改訂コーポレートガバナンス・コードが政策保有株式の縮減について言及したのには、こうした背景があるのです。

1-2 東証再編に向け、コーポレートガバナンスの新たな議論が開始

さらに、2021年にはコーポレートガバナンス・コードのさらなる改定が行われる予定となっており、それに向けた今年から議論が開始されます。

その契機となるのが、今後予定されている東証の市場再編です。現在の1部、2部、ジャスダック、マザーズの4市場が、1部銘柄で構成される「プライム」、2部とジャスダック・スタンダード銘柄を主体とする「スタンダード」、マザーズ銘柄とジャスダック・グロース銘柄などで構成する「グロース」の3市場に再編される計画となっており、それぞれの市場上場に向けた新たなガバナンスの基準が設けられる見込みです。

その中で、政策保有株式についても、現在のコードよりもさらに突っ込んだ内容が示される可能性があります。

2 政策保有株式の売却における課題とは

2-1 企業の政策保有株式縮減はまだ不十分

現状では、改訂コーポレートガバナンス・コードの指針に沿って、上場企業各社において政策保有株式の縮減は段階的に進んではいるものの、まだ十分とは言えません。今後も企業には一層の努力が促されることになるでしょう。

企業が政策保有する株式は、上場企業株の場合は市場で売却するなどして持ち分を減らすことが可能です。実際にほとんどの企業が、上場企業株から優先的に処分しています。

2-2 困難な非上場株式の売却

一方、問題なのが非上場企業株です。こちらは公開市場での売却ができないため自ら買い手を探す必要がありますが、将来的なIPOなどの出口戦略が明確なケースを除き、一般的には流動化しにくい非上場株の保有にあまりメリットはないと考えられています。そのため、実際の購入希望者は限られており、企業としても処分に困っているのが現状です。

とはいえ、コーポレートガバナンス・コードに示されている「政策保有株式」には、上場、非上場の区別が特にあるわけではありません。企業としては、目的が不明確なまま政策保有している非上場株式も、積極的に処分していく必要があります。

こうした非上場株式購入のニーズは、少数ではありますが存在しています。非上場株式の流動化に関しては、豊富な経験とノウハウを持つNGSパートナーズにご相談ください。

関連記事

 

記事協力

幸田博人

1982年一橋大学経済学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)入行、みずほ証券総合企画部長等を経て、2009年より執行役員、常務執行役員企画グループ長、国内営業部門長を経て、2016年より代表取締役副社長、2018年6月みずほ証券退任。現在は、株式会社イノベーション・インテリジェンス研究所代表取締役社長、リーディング・スキル・テスト株式会社代表取締役社長、一橋大学大学院経営管理研究科客員教授、京都大学経営管理大学院特別教授、SBI大学院大学経営管理研究科教授、株式会社産業革新投資機構社外取締役等を務めている。

主な著書

『プライベート・エクイティ投資の実践』中央経済社(幸田博人 編著)
『日本企業変革のためのコーポレートファイナンス講義』金融財政事情研究会(幸田博人 編著)
『オーナー経営はなぜ強いのか?』中央経済社(藤田勉/幸田博人 著)
『日本経済再生 25年の計』日本経済新聞出版社(池尾和人/幸田博人 編著)

« »