非上場企業の少数株式の流動化支援、株主構成・資本政策の課題解決

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非上場企業の少数株式の流動化支援、株主構成・資本政策の課題解決

2020年11月19日

非上場の同族会社でも重要な資本政策とは

株式会社の経営権を確保できるか否かは、株主の持株比率により決定されるため、株主の持株比率をどうしていくかの計画である資本政策は非常に重要です。これは、上場企業やIPOを目指している会社に限定されたものではなく、非上場の同族会社にとっても同様です。資本政策を怠ってしまったために、経営陣が数%しか保有しておらず、会社としての意思決定が滞ってしまっているケースもあります。今回は、非上場の同族会社でも重要な資本政策について、解説していきます。

1 資本政策とは

資本政策とは、資金調達、株主構成、株主の利益の最適化を図るための計画を指します。言い換えれば、「誰から、どの程度の資金を、いくらの株価で調達するのか?」、「経営陣の持ち株比率をどの程度にするか?」、「創業者などの株主の株式売却による利益をどの程度見込むのか?」などを考えることを指します。株式会社の経営権を確保できるか否かは、株主の持株比率により決定されるため、資本政策は非常に重要です。このことは、非上場の同族会社にとっても同様です。相続などを繰り返す中で株式が分散していれば、株式の集約化を目指す必要がありますし、株式公開を断念した場合は、例えば、VCなどの外部株主から株式の買戻しを検討する必要もあります。株式を集約することで、安定的な経営権を確保することが可能です。

2 非上場の同族会社では、株式の課題を意識しなくなりやすい?

資本政策は、非上場の同族会社にとっても極めて重要ですが、非上場の同族会社では株式の課題を意識しなくなりやすい状況でもあります。というのも、非上場の同族会社の株主は、親族で占められおり、そもそも外部株主を意識する必要がありません。また、相続も頻繁に発生するわけではありません。資金調達についても、多くの場合、銀行借入により行われます。そのため、株主構成が固定化されており、普段の経営において、株式の課題に対する意識が希薄化しがちです。

一方で、資本政策を怠ってしまった結果、業績は非常にいいが、株式が分散して、経営者の持ち分比率が数%という非上場企業もたくさんあります。このような状態では、何か問題が起きたときに、経営者が機動的に重要な意思決定をすることができません。このような事態を避けるためにも、株式の分散を防ぎ、集約化を進めていくことが重要です。同時に、相続など発生時に、後継者へのスムーズな移動を事前に検討しておくことが必要です。

【関連】非上場株式が分散することのリスクと集約方法

3 株式の分散を回避するための準備

・譲渡制限株式条項を定款に定める

定款で譲渡制限株式と定めることで、会社の承認なしに株式が第三者に譲渡されることを防ぐことが可能です。

・相続人等に対する売渡しの請求を定款に定める

会社法では、譲渡制限の付いた株式について、相続その他の一般承継によって会社の株式を取得した者に対し、その株式を会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができるとされています(会社法第174条)。

会社法174条

(相続人等に対する売渡しの請求に関する定款の定め)

株式会社は、相続その他の一般承継により当該株式会社の株式(譲渡制限株式に限る。)を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができる。

これにより、株主が亡くなり相続人が新たに株主となった場合には、会社がその株主に対しその株式を売り渡すことを請求し、株式の分散を防止することができます。

【関連】非上場株式の分散を防止する方法:相続人等に対する売渡請求について

・自己株式の取得における売主追加請求権の排除を定款に定める

特定の株主から会社が自己株式として買い取りたい場合、株主平等の観点から、他の株主にも売主追加請求権が認められています。自己株式の取得における売主追加請求権の排除を定款で定めることで、特定の株主からのみ株式を買い取ることができるようになります。

・従業員持株会、社団法人・財団法人などの活用

経営者に有効的な株主として従業員持株会、社団法人・財団法人などを活用し、株式の分散を計画的に抑えることも可能です。

4 株式を移動・増資する際の留意点

非上場の同族会社で、株式の移動、増資を行う場合は、経営陣が、安定的な経営権を確保できる株主構成を念頭に行うことが大切です。

また、株式の分散の観点からは、役職員個人に直接株式を保有させる場合などは、退職時にトラブルが生じる可能性が考えられます。例えば、退職時の買戻し条項を設けていなかったために、個人が株式を保有したまま退職し、将来相続が発生することで、株主が急激に増加してしまうというケースも考えられます。このようなトラブル防止のためにも、あらかじめ役職員の持株会を設立などを検討をする必要があります。

5 まとめ

資本政策は、上場非上場に関わらず、会社や創業者など株主にとって非常に重要なものである上、実行後の軌道修正が難しいものであるため、専門家の助言を受けながら進めていくことをおすすめします。

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記事協力

幸田博人

1982年一橋大学経済学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)入行、みずほ証券総合企画部長等を経て、2009年より執行役員、常務執行役員企画グループ長、国内営業部門長を経て、2016年より代表取締役副社長、2018年6月みずほ証券退任。現在は、株式会社イノベーション・インテリジェンス研究所代表取締役社長、リーディング・スキル・テスト株式会社代表取締役社長、一橋大学大学院経営管理研究科客員教授、京都大学経営管理大学院特別教授、SBI大学院大学経営管理研究科教授、株式会社産業革新投資機構社外取締役等を務めている。

主な著書

『プライベート・エクイティ投資の実践』中央経済社(幸田博人 編著)
『日本企業変革のためのコーポレートファイナンス講義』金融財政事情研究会(幸田博人 編著)
『オーナー経営はなぜ強いのか?』中央経済社(藤田勉/幸田博人 著)
『日本経済再生 25年の計』日本経済新聞出版社(池尾和人/幸田博人 編著)

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