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2020年12月3日

発行株式が譲渡制限株式の非上場企業は、絶対に敵対的買収されないのか?

先日、ある非上場企業の3代目社長から、「自社株式を過半数有しているわけではないが、自分に賛同する者で取締役会の過半数を占めている。非上場企業で、発行株式に譲渡制限を定めているので、絶対に敵対的買収されることはなく安心だ。」という話を聞いた。本当にそうだろうか?今回は、発行株式が譲渡制限株式の非上場企業における敵対的買収のリスクについて、解説していきます。

1 譲渡制限株式とは

会社法は、譲渡制限株式を認めています。譲渡制限株式とは、「株式会社がその発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定めを設けている場合における当該株式」を指します(会社法2条17号)。

多くの非上場企業では、会社にとって好ましくない者が株主となることや株式の保有関係が複雑化することを防ぐために、株式の譲渡に発行会社の承認を必要とする旨を定款に定め、「譲渡制限株式」としています。

2 譲渡制限株式を買い進める方法

では、定款にこの譲渡制限を定めている非上場企業は、敵対的買収をされることはないのでしょうか?

例えば、発行株式に譲渡制限を定めている非上場企業X社の株主であるグループAとグループBが争うケースがあったとします。

<前提条件>
X社:1種の譲渡制限株式を発行、株券発行会社、取締役設置会社
グループA:取締役会の多数、株主総会の議決権の過半数は有していないが多数派
グループB:取締役会の少数、譲渡承認請求を取締役会に出しても否認される

上記、前提条件で、例えば、X社の株主甲からグループBの個人Bが株式を譲受する場合、次の手順で譲渡承認株式を“事実上”、買い集めることが可能です。

  • 1)株主甲と個人Bとの間で、株式譲渡契約書を締結する
  • 2)株主甲から個人Bに対して、株券の交付する
  • 3)個人Bから株主甲に対して、株式代金の支払う
  • 4)株主甲から個人Bに対して、株主総会についての委任状を交付する
  • 5)1)~4)について、X社及び第三者に対する守秘義務契約を締結する

買い集めにより、グループBが委任状も含め、株主総会の議決権の過半数を有する多数派となった段階で、株主総会決議でグループBの者を取締役に選任し、取締役会の過半数を占めた段階で、譲渡承認請求を取締役会で承認し、株式の譲受を行います。株式不発行会社においても、ほぼ同じ方法で、株式の譲受を行うことが可能です。

3 文具メーカーぺんてるの事例

2019年には、文具メーカーのぺんてるを巡り、文具業界1位のコクヨと同じく業界2位のプラスが株と委任状の争奪戦(プロキシーファイト)を行いました。非上場企業のぺんてるの株式には、売買に取締役会の承認が必要な譲渡制限が定められていました。この問題を打破するため、コクヨは既存株主から株を買い取る際に株主総会の委任状もセットで取り付ける方法により過半数の株式取得を目指しました。コクヨは、ぺんてるが取締役会で譲渡承認を否認すれば、臨時株主総会を招集し、現経営陣を退陣させたうえで、新しい経営陣に譲渡を認めさせる予定だったと推測されます。最終的に、コクヨはぺんてる株の約46%の保有に留まり、当初の目的は達成されませんでしたが、非上場企業でも株主構成によっては今回のようなリスクがあることが分かる事例です。

4 まとめ

このように、発行株式が譲渡制限株式の非上場企業でも、株主構成によっては、敵対的買収を仕掛けられる可能性はあります。このような事態を防ぐためにも、資本政策を考えながら、会社のビジョンについて株主としっかり対話を続けていくことが大切です。

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記事協力

幸田博人

1982年一橋大学経済学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)入行、みずほ証券総合企画部長等を経て、2009年より執行役員、常務執行役員企画グループ長、国内営業部門長を経て、2016年より代表取締役副社長、2018年6月みずほ証券退任。現在は、株式会社イノベーション・インテリジェンス研究所代表取締役社長、リーディング・スキル・テスト株式会社代表取締役社長、一橋大学大学院経営管理研究科客員教授、京都大学経営管理大学院特別教授、SBI大学院大学経営管理研究科教授、株式会社産業革新投資機構社外取締役等を務めている。

主な著書

『プライベート・エクイティ投資の実践』中央経済社(幸田博人 編著)
『日本企業変革のためのコーポレートファイナンス講義』金融財政事情研究会(幸田博人 編著)
『オーナー経営はなぜ強いのか?』中央経済社(藤田勉/幸田博人 著)
『日本経済再生 25年の計』日本経済新聞出版社(池尾和人/幸田博人 編著)

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