非上場企業の少数株式の流動化支援、株主構成・資本政策の課題解決

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非上場企業の少数株式の流動化支援、株主構成・資本政策の課題解決

2020年11月12日

黄金株(拒否権付種類株式)を活用した非上場企業の事業承継

黄金株と聞くと、とても高価で利益を生み出す株式という印象を受けるかもしれませんが、実際は、通常の株主総会の決議に対して拒否権を有する種類株式のひとつです。うまく活用すれば事業承継をスムーズに進められますが、与えられた権利が大きいため、会社にとって悪影響を与えるリスクもあります。今回は、黄金株のメリット、デメリット、事業承継における活用方法等について解説します。

1 黄金株とは

黄金株とは会社法第108条1項八号により認められている種類株式の一種で、拒否権付種類株式とも呼ばれます。英語ではgolden share(=黄金株)と呼ばれます。

第108条 株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。(以下、略)

八 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社(第478条第6項に規定する清算人会設置会社をいう。以下この条において同じ。)にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの

黄金株は、株主総会の決議の他に、種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を必要とする株式で、取締役の選任や解任、事業譲渡、会社の合併など重要議案を拒否することができます。事業承継やM&Aで有効な効果を発揮しますが、逆に権限が濫用される可能性もあるため、譲渡制限などが設けられることが一般的です。

2 黄金株のメリット、活用方法

非上場の同族会社で、後継者への株式移転と経営権移転のタイミングが合わない場合に、黄金株が活用されます。例えば、非上場の同族会社の株式評価額が低いタイミングで、普通株式を後継者に譲渡又は贈与し、黄金株を先代が保有したままで、会社のブレーキ役として会社をコントロールしつつ、時間をかけて、後継者を育成していきます。こうすることで、株式移転に伴う所得税や贈与税を安く抑えつつ、経験が浅い後継者の経営における重要事案に対する拒否権を有したまま、事業承継を進めていくことが可能になります。

なお、拒否権は、さまざまな項目に設定することが可能で、例えば以下のようなものがあります。

  • ・取締役・監査役の選任・解任
  • ・特定事項に係る定款変更
  • ・重要な財産の全部または一部の処分
  • ・吸収合併等の組織再編行為
  • ・募集株式の発行
  • ・新株予約権の発行
  • ・資本金の額の減少
  • ・解散

3 黄金株のデメリット

黄金株のデメリットとしては、下記2点があります。

3-1 権利が濫用され経営に悪影響を及ぼす可能性がある

黄金株は、非常に大きな権利が付与されているため、譲渡や相続により、不都合な相手に渡ってしまった場合は、経営の意思決定が進まない事態に陥ることも想定されます。そのため、譲渡制限や付加する拒否権の規定を細かく設定することが必要となります。また、相続により黄金株が不都合な相手に渡らぬよう、相続が発生した際に黄金株を会社が取得できるよう取得条項付株式として規定しておくのが有効的です。

3-2 拒否権しかないため、自ら物事を進めにくい

黄金株は、株主総会の決議等に対する拒否権しかないため、黄金株を保有している株主自らが、物事を進めにくいというデメリットもあります。一方、経営陣は黄金株を保有している株主を意識した経営を行わざるを得ず、自らの意思で会社を成長させにくいという側面もあります。

4 黄金株の発行方法

黄金株は拒否権付種類株式なので、その発行には種類株式の発行手続きを実施する必要があります。現在発行されている株式とは別に新たに黄金株を発行する場合は、まず内容や発行可能株式総数を定款で定め、株主総会の特別決議で承認される必要があります。

5 まとめ

株主総会の決定を拒否できる黄金株は、会社の事業承継をスムーズに進めるための有用な手段になり得ます。一方で、非常に大きな権利が与えられているため、不都合な相手に保有されることで、会社の成長を阻害してしまう可能性も十分にあります。そのため、黄金株の発行については、メリット、デメリットを理解し、慎重に進める必要があります。

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記事協力

幸田博人

1982年一橋大学経済学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)入行、みずほ証券総合企画部長等を経て、2009年より執行役員、常務執行役員企画グループ長、国内営業部門長を経て、2016年より代表取締役副社長、2018年6月みずほ証券退任。現在は、株式会社イノベーション・インテリジェンス研究所代表取締役社長、リーディング・スキル・テスト株式会社代表取締役社長、一橋大学大学院経営管理研究科客員教授、京都大学経営管理大学院特別教授、SBI大学院大学経営管理研究科教授、株式会社産業革新投資機構社外取締役等を務めている。

主な著書

『プライベート・エクイティ投資の実践』中央経済社(幸田博人 編著)
『日本企業変革のためのコーポレートファイナンス講義』金融財政事情研究会(幸田博人 編著)
『オーナー経営はなぜ強いのか?』中央経済社(藤田勉/幸田博人 著)
『日本経済再生 25年の計』日本経済新聞出版社(池尾和人/幸田博人 編著)

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