はじめに
「非上場企業の少数株式を売却したいけれど、発行会社には、いつ、どのように伝えればよいのだろう」
非上場企業の少数株式を保有している方の中には、このような不安を感じる方もいるのではないでしょうか。
一般的なM&A(過半数の株式譲渡)では、会社の経営権を持つ株主が、自社の株式を売却するケースが中心です。
一方、非上場企業の少数株式の売却では、売り手である少数株主と、発行会社は別の当事者です。
そのため、第三者への売却を検討する場合には、「売り手」「買い手」に加えて、「発行会社」との調整も必要になります。
そのため、少数株式の売却では、買い手を探したり、売却価格を検討したりするだけでなく、発行会社にいつ、どのように売却の意向を伝えるかなど、発行会社との調整も重要になります。
発行会社への伝え方やタイミングによっては、その後の売却手続きがスムーズに進まなくなることもあります。
日本成長支援パートナーズが、非上場企業の少数株式の保有経験者326名を対象に実施したアンケート調査でも、非上場株式の売却にあたって必要だと思う支援として、「発行会社との調整」が挙げられました。
もっとも、少数株式を売却するからといって、発行会社と対立する必要はありません。
本記事では、発行会社との関係にも配慮しながら、非上場企業の少数株式の売却を進める際のポイントについて解説します。
1. 少数株式の売却で、発行会社と対立する必要はない
非上場企業の少数株式を売却しようとすると、「発行会社との関係が悪くなるのではないか」と心配される方もいるかもしれません。
しかし、少数株主が保有する株式の売却を検討することと、発行会社と対立することは同じではありません。
株主には、相続や資産整理、保有意義の変化など、それぞれ株式を売却したい事情があります。
一方、発行会社にも事情があります。
例えば、株主から株式を買い取ってほしいと相談されたとしても、自己株式の取得には会社からの資金流出を伴うため、必ず買い取りに応じられるとは限りません。
また、第三者への売却を検討する場合には、発行会社としても、これまで関係のなかった外部の株主が加わることに懸念を持つ場合があります。
このように、売り手と発行会社では、それぞれ立場や事情が異なります。
少数株式の売却では、こうした双方の事情を踏まえながら進めていくことが大切です。
2. 発行会社には、いつ売却の意向を伝えるか
では、発行会社には、どの段階で売却の意向を伝えればよいのでしょうか。
発行会社に売却の意向を伝えるタイミングについて、一律の正解があるわけではありません。
発行会社とのこれまでの関係や、株式を取得した経緯、売却を検討する理由などによって、適切な進め方は異なります。
ただし、売却を考え始めた段階で、すぐに発行会社へ「株式を買い取ってほしい」と伝えなければならないわけではありません。
まずは、自分が保有している株式の状況や、売却にあたって確認しておきたい事項を整理しておくことが大切です。
非上場企業の少数株式の売却を検討する際に、最初に確認しておきたいことについては、以下の記事でも解説しています。
そのうえで、発行会社との関係や売却を検討する理由などを踏まえ、いつ、どのように売却の意向を伝えるかを検討していきます。
3. 発行会社が株式を買い取らない場合はどうする?
発行会社に株式の売却について相談したとしても、必ずしも発行会社が買い取りに応じるとは限りません。
前述のとおり、発行会社による自己株式の取得には会社からの資金流出を伴います。
そのため、会社の資金状況や今後の事業計画などによっては、株式を買い取ることが難しい場合もあります。
また、発行会社から買い取りの提案があったとしても、提示された価格などの条件が、売り手の希望と合わない場合もあります。
このような場合でも、「発行会社が買い取らないのであれば、株式を売却することはできない」とは限りません。
非上場株式には証券取引所のような市場はありませんが、発行会社以外の第三者への売却を検討することもできます。
第三者への売却を検討する場合には、誰が買い手になり得るのか、どのように買い手を探すのかといった点を整理していくことになります。
ただし、第三者の買い手が見つかれば、それだけで売却が完了するわけではありません。
第三者への売却を進める場合にも、発行会社との関係に配慮しながら進めていくことが重要です。
4. 第三者への売却を進める場合も、発行会社との調整が重要
第三者の買い手が見つかった場合でも、発行会社との調整は重要です。
発行会社からすれば、これまで関係のなかった第三者が新たな株主になることについて、「どのような買い手なのか」「なぜ第三者への売却を検討しているのか」といった点が気になることもあります。
そのため、買い手が見つかったことだけを一方的に伝えるのではなく、発行会社の立場にも配慮しながら、必要な情報を整理して伝えていくことが大切です。
また、発行会社への伝え方やタイミングによって、その後のコミュニケーションの進み方が変わることもあります。
特に、発行会社との関係が長い場合や、親族・取引先などの関係を背景として株式を保有している場合には、これまでの経緯も踏まえながら進める必要があります。
少数株式の売却では、売却価格や買い手だけでなく、発行会社との関係も含めて、全体を見ながら進めていくことが重要です。
まとめ
非上場企業の少数株式の売却では、「売り手」「買い手」に加えて「発行会社」が関係するため、発行会社との調整も重要になります。
しかし、少数株式を売却することと、発行会社と対立することは同じではありません。
売り手には株式を売却したい事情があり、発行会社にも、自己株式の取得による資金流出や、新たな株主が加わることへの懸念など、それぞれの事情があります。
そのため、発行会社との関係にも配慮しながら、売却の進め方や、発行会社に伝えるタイミング・内容を考えていくことが大切です。
日本成長支援パートナーズでは、非上場企業の少数株式の売却について、買い手探しだけでなく、発行会社への伝え方や売却の進め方についても支援しています。
- 「発行会社にまだ売却の意向を伝えていない」
- 「どの段階で発行会社に伝えればよいのか分からない」
- 「発行会社との関係にも配慮しながら売却を進めたい」
といった段階でも、ご相談いただけます。
非上場企業の少数株式の売却を検討されている方は、お気軽にご相談ください。
関連記事
記事協力
幸田博人
1982年一橋大学経済学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)入行、みずほ証券総合企画部長等を経て、2009年より執行役員、常務執行役員企画グループ長、国内営業部門長を経て、2016年より代表取締役副社長、2018年6月みずほ証券退任。現在は、株式会社イノベーション・インテリジェンス研究所代表取締役社長、リーディング・スキル・テスト株式会社代表取締役社長、一橋大学大学院経営管理研究科客員教授、京都大学経営管理大学院特別教授、SBI大学院大学経営管理研究科教授、株式会社産業革新投資機構社外取締役等を務めている。
主な著書
『プライベート・エクイティ投資の実践』中央経済社(幸田博人 編著)
『日本企業変革のためのコーポレートファイナンス講義』金融財政事情研究会(幸田博人 編著)
『オーナー経営はなぜ強いのか?』中央経済社(藤田勉/幸田博人 著)
『日本経済再生 25年の計』日本経済新聞出版社(池尾和人/幸田博人 編著)



















